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現場から見えた「する・みる・支える」とスポーツPRの現在地|W杯視察レポート〜サンフランシスコ・サンノゼ編〜

こんにちは!サニーサイドアップでスポーツ案件を担当する近藤・青木です。

アメリカでのワールドカップ視察。ダラスに続き、西海岸のサンフランシスコ、サンノゼ(サンタクララ)に移動し、引き続き「する・みる・支える」の視点からスポーツの体験設計について考察を深めました。

盛りだくさんの全4編でお届けしてきたW杯レポートも、本記事がいよいよ最後となる第4編。西海岸で体感したスポーツPRにおける「体験設計」の最前線をレポートします。

第3編のダラス編では、大型ドーム施設「COSM(コズム)」での最新テクノロジーによる観戦の拡張に加え、街全体を巻き込んだ「日常への浸透」に圧倒されました。例えば、エンタメ商業施設「Grandscape(グランドスケープ)」や、ローカルな熱気にあふれる屋外施設「トラックヤード」、さらにはその中にあるユニークな「便座美術館(Toilet Seat Art Museum)」に至るまで、街のあらゆる場所にパブリックビューイング(PV)が設置されていました。競技場から遠く離れた日常の空間すらも即席のスタジアムと化し、まさに“まちをあげて”大会の熱狂を共有する空間デザインが見事でした。

もちろん、ここサンフランシスコでもその熱の波はしっかりと街に届いていました。象徴的だったのが、言わずと知れた一大観光地「Pier(ピア) 39」での光景です。海沿いのオープンな飲食店が即席のスポーツバーと化し、ワールドカップの熱をうまく“集客”に活用していました。THE・観光地という非日常の空間とスポーツの熱狂が掛け合わされ、通りがかった多国籍な観光客が次々と足を止めて一緒に盛り上がる。これもまた、ダラスとは異なるアプローチでの見事な空間づくりでした。

そうした街中でのオープンな熱狂の一方で、ここ西海岸のスタジアム視察において強く実感したのは、スポーツ空間そのものが提供する「圧倒的な滞在価値」と、巨大イベントを成立させる「見えないインフラの力」でした。スポーツPRにおける「体験設計」の最前線をレポートします。

みる・過ごす:オラクル・パークに見る“球場=滞在型エンタメ空間”

今回の研修の中で、非常に象徴的でハッとさせられた言葉がありました。MLBサンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地「オラクル・パーク」を視察した際、関係者が語ったこの一言です。

「球場は試合を見に来る場所ではなく、“1日を過ごす場所”になっています」

この言葉は、現代のスポーツ観戦の本質を見事に突いていました。今回、特別にスタジアムのバックヤードからラグジュアリーなスイートルームまで視察させていただきましたが、そこで見たのは、野球という競技の枠を超えた緻密な「時間設計」と「空間設計」の数々でした。

最も驚かされたのは、球場内に『The Gotham Club(ザ・ゴッサム・クラブ)』と呼ばれるVIP専用のクラブがあり、その中にボウリング場が併設されていたことです。試合の合間や前後にボウリングを楽しみ、上質な食事を味わい、サンフランシスコ湾の美しい景色を眺めながら仲間と会話を弾ませる。野球観戦はあくまで1日の楽しみの一つとして位置付けられています。

さらに印象的だったのが、ファンと選手の距離感を縮める特別な空間設計です。例えば「Blue Shield Field Club(ブルー・シールド・フィールド・クラブ)」と呼ばれるプレミアムシートでは、ただグラウンドに近い席に座れるだけではありません。この席のチケットを持つファンは、選手のクラブハウスと直結する選手用通路のすぐ外のエリアにアクセスできる仕組みになっています。 運が良ければ、試合直前にグラウンドへと向かう選手と間近で遭遇し、言葉を交わすことができるのです。「試合を見る」だけでなく「裏側の興奮を共有する」ことまでが、チケットの価値として見事にパッケージ化されていました。

ダラスで体験した、街中を巻き込むパブリックビューイングや体験型のサッカー・エンターテインメント施設「TOCA Social(トーカ・ソーシャル)」とも本質は同じです。「スポーツ=競技を見る時間」から「スポーツ=誰かと豊かな時間を過ごすための空間」へと価値が完全にシフトしています。PRの視点から言えば、私たちが伝えるべきは試合の勝敗や選手のデータだけでなく、「ここでどんな最高の体験ができるのか」というライフスタイルの提案なのだと改めて痛感しました。

みる・支える:リーバイス・スタジアムが内包する熱狂とホスピタリティ

続いて、サンノゼ近郊にあるシリコンバレーの中心地、リーバイス・スタジアムへ。ここではワールドカップの「ヨルダンvsオーストリア戦」を観戦しました。

スタジアムを埋め尽くす両国サポーターの熱量、響き渡るチャント、そして国を背負って戦う選手たちの気迫。メガスポーツイベントならではの「現地にいることの強度」は圧倒的でした。しかし、PRパーソンとして視線が向かったのは、その熱狂を安全に、かつスムーズに「支える」裏側の設計です。

7万人近くを収容する巨大スタジアムにおいて、多国籍・多言語のファンが入り乱れる中での導線設計、セキュリティチェックのスムーズさ、そして何よりスタッフやボランティアたちのホスピタリティ。シリコンバレーならではのテクノロジーを活用したアプリでの案内や事前オーダーシステムなども機能していましたが、最終的に体験の質を担保していたのは、現場の「人」の力による的確な運営でした。

熱狂を生み出すだけでなく、その熱狂をストレスなく楽しんでもらうための「守りの体験設計」。これが機能して初めて、「ワールドカップ」という巨大なブランドの信頼性が保たれていることを肌で感じました。

まとめ:スポーツPRの主戦場は「時間設計」へ

ダラス、そしてサンフランシスコ・サンノゼと巡った今回の視察。一貫して見えてきたのは、「スポーツはもはや単なる競技ではなく、統合された体験設計ビジネスである」という事実です。

ダラスで見られた、まちをあげて熱狂を共有する日常空間の拡張や、ピア39のような観光地での即席の巻き込み。オラクル・パークにおける「1日を過ごす場所」としての滞在型エンタメ設計や、裏側まで入り込める導線設計。リーバイス・スタジアムにおける、熱狂と安全を両立させる運営設計。これらはすべて、「ファンにどのような時間を過ごしてもらうか」という明確な意図のもとに作られています。

スポーツPRの役割も変化しています。単に試合の存在を「広く知らせる」ことにとどまらず、その場所で得られる価値や過ごし方を「魅力的な文脈として翻訳し、届ける」こと。そして、イベントの裏側にある運営の誠実さや安全への配慮といった「ブランドの信頼を構築する」こと。

「どう体験を設計し、どうその魅力を届けるか」。この問いに向き合い続けることが、これからのスポーツPR、さらにはあらゆる体験型エンターテインメントの価値を最大化していく鍵になると確信した視察となりました。

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