ワールドカップはスタジアムの外でも続いている。ニューヨークで見た、スポーツが街と人を動かす仕組み|W杯視察レポート〜NY編〜
こんにちは!ロサンゼルス編に引き続き、サニーサイドアップの齊木と石黒です!
ロサンゼルスでは、開催国アメリカの開幕戦や「SoFi Stadium」を通じて、世界最高峰のスポーツイベントを支える「会場」と「観戦体験」についてレポートさせていただきました。
第2編では舞台をニューヨークに移し、スタジアムや試合会場の”外側”で繰り広げられていた仕掛けの数々に迫っていきます!
世界有数の商業都市であるニューヨークでは、ワールドカップというスポーツイベントが、スポンサー企業やスポーツブランド、小売、そして街全体とどのように結び付き、新たな価値を生み出しているのかを見て回りました。また、MLBの観戦を通して、スポーツ観戦そのものだけではない「体験価値」についても学んできました。
街を歩いて感じた、”ワールドカップ一色”ではないニューヨーク
ワールドカップ期間中ということもあり、サッカーによる街中の賑わいを想像していました。ところが、実際にはロサンゼルスと同様、街全体がワールドカップ一色ということはなく、むしろワールドカップ期間中であることを感じさせないほど、日常の風景でした。もちろん大会のオフィシャルパートナーによる広告やユニフォーム姿のサポーターを見かける機会はありましたが、日常の街並みが大きく変わるほどではなかった印象です。
その一方で、強い存在感を放っていたのが大会スポンサーやスポーツブランドです。「街全体をデコレーションする」のではなく、「ブランドが体験を生み出す」ことで大会を盛り上げている。その違いが非常に印象的でした。
スポーツブランドがつくる、スポーツを楽しむ場所
特に印象に残ったのは、ワールドカップ公式パートナーであるadidasの取り組み。その理由を一言で示すなら、彼らが”モノを売る場所”から”人を集める場所”へと、自らの旗艦店の役割を根本からアップデートしていたからです。

マンハッタンにあるフラッグシップストアに入ると、店内には試合のライブ中継を映し出す大型ビジョンが据え付けられていました。来店者は買い物を楽しみながら、居場所を変えずに試合観戦まで楽しめる。商品を販売する場所でありながら、同時にファン同士が集まり、応援し、交流する場所にもなっていました。スポーツブランドが「売る」だけではなく、「体験を提供する」ことを重視している姿勢が伝わってきました。
さらに、大会期間中にはブルックリンブリッジのたもとでも期間限定イベントを開催していました。

そこでは大型スクリーンによるパブリックビューイングに加え、オフィシャルグッズの販売や体験型コンテンツなど、多彩なプログラムが展開され、多くのファンやサポーターで賑わっていました。観光名所でもあるロケーションを生かしたイベントということもあり、試合を観戦するためだけではなく、「観光とともにワールドカップの雰囲気を楽しみたい」という人たちが自然と集まる空間になっていたことが印象的でした。
スポーツイベントをブランドが自社の世界観とスポーツの熱量を結び付けながら体験へと昇華させていく。その完成度の高さは、日本のイベントプロモーションにおいても参考になる点が多いと感じました。
スポーツが街の空気を変える瞬間
今回のニューヨーク滞在中、NBAのニューヨーク・ニックスが53年ぶりの優勝を果たしました。真夜中にも関わらず、マンハッタンでは街中が歓喜に包まれ、多くの人がチームカラーを身にまとい、現地での報道もその話題で持ちきりでした。
ワールドカップ期間中でありながら、地元チームの優勝が街全体の空気を変えてしまうほどの影響力を持っていたことからも、ニューヨーク、そしてアメリカ国内におけるNBA人気の根強さを実感しました。
「試合を観る」から「一日を楽しむ」へ

ニューヨークでは、MLBのニューヨーク・メッツの本拠地、シティ・フィールドも訪れました。
ロサンゼルスで訪れたドジャー・スタジアムと共通して感じたのは、多くの来場者が「試合観戦」だけを目的にしているわけではないということです。グッズショップでのワクワク感があり、スタジアム内には飲食店が並び、その種類も非常に豊富です。
さらにユニークだったのは、座席以外にも家族や友人と食事や会話を楽しめるスペースが数多く設けられていた点です。試合開始前から多くの人が食事と会話を楽しむ風景が広がっていました。屋根のないスタジアムならではの開放感もあり、野球観戦というよりも、休日をゆったり過ごすレジャー空間としてシティ・フィールドは機能しているように感じました。
「試合を提供する」だけではなく、「その時間をどう楽しんでもらうか」。この考え方は、ロサンゼルスでも共通して感じたことであり、アメリカのスポーツビジネスにおける大きな価値の一つだと思います。


PR・コミュニケーションに必要なのは、周辺を巻き込む発想
今回のニューヨーク視察で強く感じたのは、スポーツイベントはスタジアムの中だけで完結するものではないということです。スポンサー、街、商業施設、飲食、ファンイベントなど、多くの接点が連動することで、一つの大きな体験価値が生まれていました。そして、その一つひとつがイベントの価値を高め、来場者の満足度を押し上げていると思います。
PR・コミュニケーションの仕事に置き換えて考えると、「どう露出を増やすか」だけでなく、「どう人が集まり、体験し、誰かに伝えたくなる仕掛けをつくるか」がますます重要になると感じています。
スポーツイベントは、試合だけで人を魅了しているわけではなく、ブランド、街、人、そしてファンコミュニティが一体となって初めて、世界中の人が集まりたくなる特別な体験が生まれます。今回ニューヨークで目にした光景は、スポーツが持つ経済的・文化的な影響力の大きさを改めて実感するとともに、PRという仕事の可能性についても多くの気付きを与えてくれました。
ロサンゼルスで学んだ「最高の観戦体験」と、ニューヨークで学んだ「街全体を巻き込む体験設計」。
そして、現地で見た取り組みや熱量を、日本国内のイベントやスポーツプロモーションにも生かしながら、「体験そのものをデザインするPR」、そして多くの人の心を動かすコミュニケーションを考え続けていきたいと思います。



