【ACC2022 PR部門解説】PRプランナーがACC TOKYO CREATIVITY AWARDS PR部門から学んだものとは
■はじめに
今の時代に即したPR手法やブランディングのノウハウなどを読み解く連載企画「SSUのPRメソッド」。今回は、「PR会社プランナーがACC TOKYO CREATIVITY AWARDS PR部門から学んだものとは」というテーマでお話しさせていただきます。これまでのPRメソッドはコチラから。
■目次
-はじめに
-ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSとは
-ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS PRカテゴリー入賞作品一覧
-入賞作品解説 1本目「静岡市プラモデル化計画/静岡市」
-入賞作品解説 2本目「いったん、しおりを挟みます。/三省堂書店」
-入賞作品解説 3本目「やさしくないミュージアム/WOWOW」
-おわりに
みなさま、またもやご無沙汰しております。
今回は前回とは打って変わって国内の広告賞である「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」のPR部門について書かせていただきます。
ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSとは
クリエイティビティがあなたを変える、
世界を変える。
「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」は、テレビ、ラジオCMの質的向上を目的に、1961年より開催されてきた広告賞「ACC CM FESTIVAL」を前身とし、2017年よりその枠を大きく拡げ、あらゆる領域におけるクリエイティブを対象としたアワードにリニューアルしました。
名実ともに、日本最大級のアワードとして広く認知されており、総務大臣賞/ACCグランプリは、クリエイティブ業界で活躍する関係者の大きな目標となっています。
部門は、下記の大きく8つの部門で構成されます。
-フィルム部門
-フィルムクラフト部門
-ラジオ&オーディオ広告部門
-マーケティング・エフェクティブネス部門
-ブランデッド・コミュニケーション部門
-デザイン部門
-メディアクリエイティブ部門
-クリエイティブイノベーション部門
弊社はPR会社ということで、「ブランデッド・コミュニケーション部門 Cカテゴリー:PR」の入賞作品について見ていきたいと思います。
このカテゴリーでは、“社会やコミュニティにおいて新たな合意形成を図ることで、ブランドと生活者の間の信頼関係を築き、生活者の意識や態度を変容させたプロジェクトを表彰します。ACCではPRのアイディアやクリエイティビティも重視します。”と、説明が書かれておりました。
PRは「あらゆるステークホルダーの関係構築」とよく言われ、昨今は多くのパブリシティをとるだけではなく、その先の意識変容から態度変容までをミッションとすることが求められています。それがまさに審査のポイントになっているようですが、ACCらしさでいうと、最後の一文にかかれているアイディアとクリエイティビティがより重視されているようですね。
ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS PRカテゴリー入賞作品一覧
まず入賞作品数は、下記になります。
総務大臣賞/ACCグランプリ:1
ACCゴールド:2
ACCシルバー:4
ACCブロンズ:2
ACCファイナリスト:6
作品一覧は以下の通りです。
▼総務大臣賞/ACCグランプリ
静岡市プラモデル化計画/静岡市
▼ACCゴールド
#シーマレストア/日産自動車
COTEN RADIO/COTEN
▼ACCシルバー
FRIENDLY DOOR/LIFULL
日本初!自治体が運営する移住の共創型オープンプラットフォーム「リモート市役所」/長野県佐久市
社長のおごり自販機/サントリーホールディングス
いったん、しおりを挟みます。/三省堂書店
▼ACCブロンズ
BEERY「微アル誕生」篇/アサヒビール
アテント/大王製紙
▼ACCファイナリスト
『剃るに自由を』コミュニケーション/貝印
やさしくないミュージアム/WOWOW
奨学ナプキン/大王製紙
情熱価格 ブランディングプロジェクト/パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス
宇宙飛行士に、転職だ。/国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構
人生には、飲食店がいる。/ サントリーホールディングス
以降からは、グランプリ含め、3本の作品について、自分が思ったことを書かせていただきます。
入賞作品解説 1本目
「静岡市プラモデル化計画/静岡市」(総務大臣賞/ACCグランプリ)
グランプリを取った作品ということで、まずはこちらを見ていきます。
地域プロモーションでは、街のどこに着目して話題を作るかが、最初で一番の関門だと思います。地方創生や地域プロモーションがこれだけ行われてきている中で、その地域独自の新しい特徴(名産品、産業、地域性、文化、イベントなど)を見出すのは難しいです。
グルメ、観光スポットなどはそれ単品では難しいからこそ、その地域の特徴としていくつかまとめて発信する企画にします。
ですが、今回は“静岡市のプラモデル生産量”に着目して、一点突破で企画を展開しています。これまでになかった切り口で、静岡の新しい顔を作り上げたのはとても素晴らしいと思いました。
着眼点の鋭さだけではなく、その企画力と実現力にも脱帽です。まずは地域の人にも分かりやすく、PR的にも画になるように、街中にプラモデルを模した郵便ポストや公衆電話などを立てました。
画像出典:静岡市 「静岡市プラモデル化計画」
また、細かい所ですが、公式サイトでは本プロジェクトのロゴを配布しています。興味を持ってくれた人に参加してもらえるような工夫をしています。地域プロモーションは、行政だけが発信するだけではなく、地元の企業や住民、店舗も巻き込んでいくからこそ、より強固なものになってきます。
一般的なメディアパブリシティの手法にとらわれないアイディアで、その後も地域の資産として残る(観光スポットになる)企画が、評価されたのではないでしょうか。
入賞作品解説 2本目
「いったん、しおりを挟みます。/三省堂書店」(ACCシルバー)
ここからは自分が気になった2本の作品について、書いていきます。
画像出典:三省堂書店 公式Twitter @honmal_sanseido
昨今、デジタル化・電子書籍化の影響を受けて、リアルの書店はどんどん閉店しています。先日赤坂に書店がなくなったというニュースを見て驚きました。
そんな閉店は本好きにとってはとても名残惜しいニュースなのですが、三省堂書店の神保町本店はリニューアルのため、一時閉店となります。シンプルにそのままの情報を発信していたら、きっと世間はこれまでの他の書店と同様に、悲しく感じると思います。
ただ、今回の企画はリニューアルオープンの為の一時閉店ということもあり、この閉店というニュースをリニューアルへの期待感を醸成するものへと上手く変えた企画でした。実施したことはシンプルで、書店らしく一時閉店を“しおりを挟む”と表現して、書店に巨大な懸垂幕を掲げたり、同じ意匠のしおりを店舗で配布したりしました。
このシンプルなアイディアは、直感的にその面白さが伝わりやすく、SNS上でもバズを獲得していきました。一目見て伝わるアイディア力がこの企画の強さ、評価されたポイントだと思います。
入賞作品解説 3本目
「やさしくないミュージアム/WOWOW」(ACCファイナリスト)
最後はこちらの作品です。
画像出典:WOWOW WEB MAGAZINE FEATURES
WOWOWの「WHO I AM」という世界トップパラアスリートに迫るドキュメンタリーシリーズの告知イベントです。通常の展示会では、来場者に見やすく設計された展示をしますが、こちらは車いすに座りながら展示を鑑賞しなければならない、“誰にでも平等にやさしくない”のがコンセプトの展示です。
この展示会での不自由さは、一般的なものとのギャップと、パラアスリートの世界を表現しており、面白さと訴求したいことが合致している上手い企画だと思いました。過去のACCでグランプリを取っている「注文を間違える料理店」と似ている発想です。
パラスポーツやパラアスリートの凄さを体感してもらい、その経験から障害への見方や自身の価値観が変わるキッカケを作るというのは企画上立てることは出来ますが、それを実現したイベントでとても素晴らしいと思いました。
おわりに
以上で、「PR会社プランナーがACC TOKYO CREATIVITY AWARDS PR部門から学んだものとは」を終わりとさせていただきます。
やはり、冒頭にも記載した通り、アイディア力が問われるPRの部門でした。従来のPRアクティビティに捉われない作品ばかりで、とても刺激になりました(もはや何が従来のPRアクティビティか、となってきていますが)。
少しでもみなさまのインプットの励みに、気付きになれば幸いです。
次回以降のブログも、他のメンバーのブログも、ぜひぜひお楽しみにしてください!
(もちろん、過去記事を見逃している方は、必ずチェックお願いします!!)