”ONE TEAM”は一日にしてならず!? 世界的ラグビー大会のSNSでファンの心を掴んだ方法とは?
私はこの秋、世界的ラグビー大会に関わるお仕事をさせていただいたので、その業務の一部をレポートしたいと思います!
今大会では、Twitter、Instagram、Facebook、YouTube、TikTokで公式アカウントが運用されていました。私の主な業務内容は、SNSの更新作業と、SNS上で大会がどのように評価されているのか情報を集め分析をする「ソーシャルリスニング」、いわばネットパトロールです。
SNSに投稿されたコンテンツには以下のようなカテゴリがありました。
①ラグビー競技の魅力を伝えるもの
「ノーサイド」「リスペクト」の精神に基づくストーリー。
②選手と地元の人々との交流
選手たちが日本の子供たちと触れ合っている様子や日本文化を体験している様子など今大会のレガシーとなるもの。
③ラグビーを知らない人も楽しめるコンテンツ
いわゆる“にわかファン”向けに、試合の映像を映画のパロディ風に編集するなどエンターテイメント性の高いもの。
④試合結果の速報
会場やテレビの前で観戦ができない方のために試合結果の速報は特に注力。
PR会社のスタッフとして気になったのは、もちろん③!今までラグビーに触れてこなかった人へいかに情報を届けるか、ラグビーを観てもらうきかっけを作れるかが課題でした。
大会期間中、発信されたコンテンツの一部をご紹介します。
「#にわかファン」がトレンド入り!にわか歓迎ムードを作り出す
ある試合のテレビ中継でのアナウンサーの発言がきっかけとなり、「にわかファン」というフレーズがネット上で急上昇し、トレンド入りしました。これまで、“にわか”という言葉にはなんとなくネガティブなイメージがありましたが、大会としては、“にわかファン”=“新規ファン”としてポジティブなイメージを持ってもらうために、「にわかファン歓迎」の姿勢を示していました。
#にわかファン 三箇条!
①ルールはまだよく分からない…
②でも、「ノックオン」は分かるようになった
③とにかくラグビーを観て感動した!
”にわか” なくして ”ファン” は生まれません️
これからも熱い応援よろしくお願いします
このツイートは、3000件近いリツイート、と2万件を超えるいいねを獲得しただけでなく、「誰しも最初はニワカですからね」「一緒に楽しみましょう!!分からんことあれば教えてあげれば良いだけ!」といった150件以上のポジティブなコメントが投稿されました。その中には、「ジャパンラグビートップリーグ(国内の社会人ラグビーリーグ)を観に行きたい」というファンに対し、リーグの日程を教えてあげるファンが現れるなど、SNSの発信がきっかけとなり、ファン同士の会話が生まれたことも大きな成果だったのではないかと思います。
日本中が盛り上がっている雰囲気作りと発信
これまで、PR会社のスタッフとしてテレビや新聞などのマスメディアと接してきて、幾度となく言われてきたことは、「多くの方が関心をもち、いわゆるブームや現象になっていないと紹介できません。」という言葉です。マスメディアに取り上げてもらうためには、より多くの人を巻き込み、ムーブメントをつくる必要があります。
もちろん、日本代表選手の躍進などもあり、大会が盛り上がっていることは誰がみても明らかでしたが、大会SNSでもこの熱量を最大限に発信していく努力がされていました。その一つが、著名人の投稿のリツイートです。芸能人やスポーツ選手、海外の国賓などのラグビー関連の投稿を見つけ(これはひたすら手作業です!)、公式アカウントでも拡散をさせていくことで、「こんなにも多くの人がラグビーに関心を寄せています!」というメッセージが暗に伝えられていました。
また、ほかのスポーツのファンを巻き込む工夫もされていました。10月26日に行われたJリーグYBCルヴァンカップ決勝で、川崎フロンターレのGK新井選手がPK戦の際にスーパーセーブを見せ、その後トライのパフォーマンスをするという出来事ありました。
この情報をキャッチした大会公式SNSが、客席から撮影された動画を引用する形で、「ラグビー界に衝撃。期待の新人現る。新井選手ナイストライ」と絵文字付きで称賛のコメントを発信したところ、新井選手からすぐに返信があり、SNS上の会話に発展しました。
(大会公式SNS)「新井選手ありがとうございます!もしも、ラグビーを楽しむ際にはスローフォワードに気を付けてください!」
(新井選手)「毎日ノックオンをしないように心がけてGKやっています。笑 これからラグビーの試合を観ます」
このやりとりは、翌日サッカーニュースサイトに取り上げられました!
スポーツの垣根を越えてラグビーの関心が高まっていることを、ラグビーファンにも、サッカーファンにも示すことができていた非常に良い事例だと思います。
SNSの話題をタイムリーにキャッチ!”画のおもしろさ”はやっぱり大切!
大会期間中は常に、SNSの話題が監視されていましたが、それがうまくバズにつながったのが、長ネギをもってウェールズ代表を応援するファンに関する投稿です。
ある日のウェールズ代表の試合で、長ネギをもったウェールズファンの姿がテレビ中継に映り込み、ネットで話題になりました。そこで大会公式SNSは、すぐにその映像を入手し、“なんでネギ?”という視聴者の疑問を解決するコメント付きで投稿しました。
この投稿は7000件を超えるリツイートと約2.6万件のいいねを獲得。さらに、次のウェールズ代表の試合前にもこの映像は投稿され、Twitter上で“ウェールズのネギ”に関する投稿が多数あがり、ちょっとしたざわめき?が生まれていました!
どんなものでも、PRに不可欠なのは“画作り”。見た目のインパクトはリリースの作成やPRイベントでも非常に重要です。長ネギをもったファンの投稿が話題になったのも、キャッチーなコンテンツをタイムリーに発信されたことが成功の鍵になったのだと思います。
シンプルなことではありますが、今回のSNS運用のキモになっていたのは、
✓投稿のスピードとタイミング
✓トレンドワードを追っていくこと
この2つだと感じます。
タイムリーにホットな話題を提供され続けたことで、「大会公式SNSで公開された」という形で、SNSのコンテンツをテレビ、新聞、webニュースなどで取り上げられることも多くありました。それを見た視聴者が、「公式アカウントおもしろそう」と感じ、さらにフォロワーが増えていくという好循環ができたのだと思います。
今回の経験を通して、PRにおいてSNSの役割の重要性を改めて実感することができました。スタジアムにいる人も、テレビの前で観戦している人も、都合が合わず観戦できない人も、今はほとんどの人がスマホから情報発信ができるので、多種多様なファンの生の声を集めることができます。ラグビーファンの、感動や興奮、不安や不満などに触れることができたことは非常に貴重な経験となりました。
今回の業務を通して、私も立派なにわかファンになることができたので、日本の社会人リーグの開幕を楽しみに待ちたいと思います!