変わりゆく街、渋谷から発信するメッセージとは?渋谷スクランブルスクエアのPRの裏側に迫る!【後編】
前編に引き続き、大規模複合施設「渋谷スクランブルスクエア」のPRの裏側に迫ります。前編はこちらから
―PR活動を進めていく中で、苦労した点はありましたか?
山中:
建物自体が完成したのは、開業まで残り2か月に迫った2019年8月末でした。そのタイミングでやっと施設内に入れる状況に。建物が完成するまで、“まだ見ていないもの”を記者発表やプレスリリースなどを通じて情報発信するという点では、とても苦労しましたね。
岩崎:
個人的な立場の視点も含まれますが、開業前の内覧会は自分がメインで仕切らなければならなかったので苦労しました。内覧会に伴う当社PRメンバーのスタッフィングは約60名。局や部署をまたいで沢山のメンバーからの協力を得て内覧会を完遂できたのは、とても嬉しかったですね。その一方、各PRメンバーに対して的確な指示を出すのは大変でした。コアメンバーがそのPRメンバーたちをどうディレクションするかによって、露出のアウトプットが変わってくるので、頭を使ったポイントでしたね。
■世界に発信できるものは何か?他施設との差別化がポイント
―施設のコンセプトの側面において、これまでの渋谷駅周辺の開発関連施設との違いは何でしたか?
町田:
PRを始めとしたコミュニケーション全体の戦略を考える上で、対象となるターゲットを考える必要がありましたが、渋谷スクランブルスクエアはその対象ターゲットの幅が非常に広かったです。また、“ランドマーク的な存在=渋谷の新しい象徴”としてブランドメッセージを発信していく中で、これまでの施設とは異なる視点が必要でした。
山中:
例えば、2012年に開業した渋谷ヒカリエは“渋谷駅周辺開発のリーディングプロジェクト”という位置づけでブランディングをしています。その中で、渋谷スクランブルスクエアは渋谷駅周辺開発の集大成とも言えるプロジェクトとして、どんなメッセージを誰に発信していくべきなのか。発信する対象は、東京だけではなく世界を見据えなければならないという思いがあり、「世界に発信できるものは何か?」をポイントにして考える必要がありましたね。
その中で、わかりやすく世界に発信できるコンテンツの一つとして、展望施設の「SHIBUYA SKY」を軸にして力を入れていきました。
岩崎:
いわば渋谷スクランブルスクエアとは、“ターゲットにならない人がいない”施設。全世代の方々がターゲットとも言える施設だったので、PRの仕方に苦労しましたね。
―大きなプロジェクトであるがゆえ、課題も多かったんですね。その中で、どういった成果が見られたのでしょうか。
山中:
開業から1年が経った今でも露出が絶えず、さまざまなメディアの方々にご取材いただいています。2027年度と少し先にはなりますが、渋谷スクランブルスクエア は第Ⅱ期(中央棟・西棟)の開業も控えているので、そこにもうまく繋げていきたいですね。
■変化し続ける街、渋谷から“たのしいさわぎ”が生まれた日
―“たのしいさわぎ”を実感した瞬間はいつですか?
山中:
まずは、開業日当日に約2時間待ちの入場列を見たときですね。そして、関係者をはじめとした様々な方々にも応援していただき、継続的な露出やアウトプットに繋がっているということですかね。開業日当日は感慨深かったのですが、正直そこだけぽっかり記憶が無いんです(笑)。開業から1年を経て、ようやく開業した喜びを実感することが出来ています。
町田:
“渋谷の新しいランドマーク”になるという目標を目指して挑んできた中で、開業後数か月の間に、年末の大型番組や国民的アーティストのPV撮影など、誰もが知っているようなコンテンツに施設が登場しました。チーム全員の努力が実際の景色になった達成感がありましたね。
もちろん大変な時もありましたが、一つ一つの打ち合わせ自体は本当に楽しく、真剣に前向きで、みんなでやっていこうという団結力で乗り越えることができました。
岩崎:
プライベートな時間に、施設に関するSNSの投稿やメディア露出を見かけたときは、「自分たちが手掛けたPRによって、世の中や人が動いている」と実感することが出来て、とても嬉しかったですね。やり抜いて良かったなと感じた瞬間です。
このチームでなければここまで続けることは出来なかったはず。改めて、「人」の大切さを実感しました。
町田:
私も、施設関連のニュースが地下鉄の車内モニターで流れていた時は感動しました。一人の生活者としてニュースに触れることが出来て、嬉しかったですね。
―最後に、みなさんが渋谷という街に期待することは何でしょう。どんな街にしていきたいですか?
山中:
今後、何か世の中に対してメッセージを発信するときに、まずは「渋谷」から始めようと思ってもらえる街になれば嬉しいですね。「今年は集まらないハロウィンを。」を推進した『HELLO!NEW HALLOWEEN! SHIBUYA』の取り組みなどはいい例だと思います。
町田:
私にとっての渋谷は、小さいころから馴染みのある街ですが、常に変化している街でもあります。そう考えてみると、“常に変化している街”に親しみを感じているのかもしれませんね。常に変化をしていて、新しい発見があって、多様な人が集まる場所。これからもそんな街であってほしいです。
岩崎:
“ずっと変わり続ける街”でいてほしいですよね。それが渋谷らしさであり、渋谷にしかできないことだと思います。渋谷スクランブルスクエアも、“変わっていくけど変わっていない”、そんな施設にしていきたいです。
■インタビューを終えて
実は、2012年の「渋谷ヒカリエ」開業から経常期のPRに携わっていた筆者。
施設の開業をPR視点で見ると、「開業=ゴール」と考えてしまうことも多いですが、施設側の方々の視点で見ると「開業=スタート」。施設は建物が出来るタイミングで完成する訳ではなく、そこに訪れる人・もの・情報が集まることで初めて完成するのではないでしょうか。
渋谷という街に、誇らしげにそびえる渋谷スクランブルスクエア。そのブランディング成功の裏側には、“Heart of SHIBUYA”という熱い想いと誇りを持ったPRチームの奮闘がありました。
この渋谷という街から、新たな“たのしいさわぎ”が生まれる日も、そう遠くはないのかも知れません。