“知らないこと”が一番の壁だった──LGBTQ+を考えた25卒たちの声|杉山さんの講義を踏まえた対談

はじめまして! 2025年4月に入社したソーシャルリレーション局2部の竹内と南雲です。
突然ですがみなさん、「アライ(Ally)」という言葉をご存知でしょうか?
「アライ(Ally)」とは、LGBTQ+に代表される性的マイノリティ当事者を理解し、支援する人のことです。近年、社会全体で多様な性のあり方への理解を深める動きが広がっていますが、まだ「自分ごと」として捉えるのが難しいと感じる方も少なくないかもしれません。
わたしたちサニーサイドアップグループは、PRコミュニケーションを事業の核とし、ソーシャルムーブメントの創出や社会課題の解決に取り組んできました。だからこそ、多様な人々への正しい知識と想像力を持つことは、社会に対する責任でもあると考えています。その考えに基づき、新人研修の一環として、ダイバーシティについて学ぶ時間を設けています。
今回は、株式会社ニューキャンバスの代表であり、NPO法人東京レインボープライドの共同代表理事を務める杉山文野さんをお招きし、わたしたち新卒入社メンバー向けに講演をしていただきました。
トランスジェンダー当事者・杉山文野さんに学ぶ、誰もが過ごしやすい社会とは
杉山さんは、トランスジェンダー当事者としてご自身の経験を発信しながら、LGBTQ+の啓発活動を多岐にわたって行われています。日本初となった渋谷区・同性パートナーシップ制度の制定にも携わったほか、全国で講演活動やメディア出演をされています。
パートナーとの間に二児をもうけ、精子提供者である友人とともに3人親として子育てを行う、新しいファミリーのスタイルも話題となりました。現在は、日本フェンシング協会理事や日本オリンピック委員会理事なども兼任されています。
講演は、まず2024年に世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数における日本の順位が146カ国中118位であったことなど、LGBTQ+支援において世界的に見て遅れをとっている、という現状から始まりました。
杉山さんのライフヒストリーを通じて語られたのは、社会の「当たり前」と自分自身の性との間で感じてきた葛藤の数々でした。物心ついた頃からの身体への違和感や、セーラー服を着ることへの苦痛。想像を絶する当事者の苦悩を前に、新卒入社メンバー全員、杉山さんの話に真剣に聞き入っていました。
講演の中で杉山さんは、アライ(Ally)としての具体的なアクションとして「ウェルカミングアウト(Welcoming Out)」という考え方紹介されました。
これは、当事者がカミングアウトを『する・しない』を自分の意思で選択できるよう、アライ(Ally)が理解と歓迎の姿勢を示すことで、安心できる環境を積極的に作っていく、という考え方です。カミングアウトを「待つ」のではなく、「あなたのことをもっと知りたい」「いつでも話していいよ」というメッセージを伝えることで、当事者にとって安心して過ごせる環境が生まれます。
今回の講演では、「知らなかった」という状態がいかに「無意識の偏見」に結びつくのかを、参加者一人ひとりが“自分ごと”として見つめなおす貴重な機会となりました。
たくさんの学びと気づきを与えてくださった杉山さん、本当にありがとうございました!
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杉山さんの講義に対し、実際に新卒入社メンバーはどのように感じたのでしょうか。杉山さんが学生時代を過ごされた頃と、2002年生まれの25年新卒入社メンバー教育を受けてきた現在とでは、社会の認識や、それに伴う環境にどのような違いがあるのでしょうか。
杉山さんのご自身のライフヒストリーから語られた当時の社会のあり方と、新卒入社メンバーが経験してきた現在とのギャップについて、実体験に基づく対談形式で深掘りします。
講義を終えた新卒入社メンバーの対談
対談者紹介
中村 未来(なかむら みく):写真右。大学が女子大だったため、女性のキャリアやジェンダーギャップについて学ぶ機会が多くあった。また、教授がゲイだとカミングアウトしており、大学時代からLGBTQ+の存在が身近だったため参加。 竹内 幸太(たけうち こうた):写真左。これまでLGBTQ+について考える機会がなく、関心を抱いてこなかった。 杉山さんの講義でLGBTQ+の現状について知り、興味を持ったため参加。 関 優菜(せき ゆうな):写真中央。カナダに計3回留学した経験から、周囲にLGBTQ+の友人が多かった。また、豊富なグローバル経験から、日本とカナダのジェンダーに対する教育や認知度の差に違和感を感じていたため参加。 |
Q.杉山さんのお話で印象に残ったことは?
ー杉山さんの講義の中で、高校時代に女性と交際していたご自身の経験を通し、当時の社会におけるLGBTQ+への認識や、先生との関係で直面した困難についてのエピソードが語られました。杉山さんが学生だった時代から、世間の風潮や常識がどのように変化していると感じるか、対談者に聞きました。
関:まだLGBTQ+への偏見があるなと感じています。周りにレズビアンやバイセクシャルの友達がいますが、彼らもカミングアウトしにくいな、と…。カナダは「自分らしく生きること」を尊重する風潮がある一方、日本では特に「周りに合わせること」が重視される傾向があると感じています。
ただ、「LGBTQ+を含めた自分のアイデンティティをカミングアウトするのは良くない」という風潮は、昔よりは改善している気がします!
中村:わたしは特に、杉山さんの「制服のスカートが嫌だった」という話が印象的でした。制服のスカートとズボンを選べないのは、わたしたちが学生の頃もまだ残っていました。
竹内:自分は海外に行った経験がなくて比較対象がなかったので、日本にまだ差別が残ってるなんて考えたことがありませんでした。ただ杉山さんの経験が、聞いていて本当に辛かったです。
関:それは本当にそう。同じ人間だし、好きになっちゃいけないなんてない。
ーそれぞれの経験から、LGBTQ+についての世間の風潮や常識は杉山さんの学生時代よりは改善しているものの、カミングアウトのしやすさや制服のスカートなど、まだまだ生きづらさを感じる要素が残っていることがわかりました。では、こうした現状を踏まえたうえで、実際に杉山さんの講義を受けた学生たちは、どのようなことを感じ、どのように考え方が変わったのでしょうか。
Q.杉山さんの講義を受け、考え方の変化はあったのか?
中村:杉山さんとパートナー、そしてお子さんを囲む温かい関係性がとても素敵だと感じました。法的な課題は残りますが、多様な家族のあり方として、こうした形も社会に理解が広がってほしいと個人的には感じます。
竹内:自分は「性のあり方は目に見えない」という杉山さんの言葉を受け、世界中みんなが幸せであるべきだと思ってるので、ウェルカミングアウトをしていきたいし、何気なく使う単語にも気をつけなきゃって思いました。
関:最近では、「女子アナ」といった表現も、性別を特定しない、より包括的な表現へと見直される動きがあることに気付かされます。
ー各々、杉山さんの具体的なエピソードを聞いたことで、当事者の事情を身近に感じたようです。それでは、身近にいるLGBTQ+の人々に対し、どのようにダイバーシティの実現に向け一人一人の行動を変えていけば良いのでしょうか。
Q.誰もが生きやすい社会にするために、私たちができることとは?
中村:アイスランドの女性大統領が登壇するイベントで、指導担当の先輩から「女性活躍を推進している国だから、『旦那さん』ではなく『パートナー』と紹介して」と言われたのを覚えています。LGBTQ+にかかわらず、ぽろっと言ったことで人を傷つけないよう気をつける必要があると考えています。
関:相手の性別を特定する言葉は、避けた方がいいですね。
対談を通して、誰もが生きやすい社会の実現には、LGBTQ+であることに関わらず「一人の人として」相手を尊重する思いやりの心を持つことが不可欠であると、改めて認識することができました。
最後に…
わたしたちサニーサイドアップグループは、PRやコミュニケーションを通じて社会課題の解決に取り組んでおり、多様な人々への正しい知識と想像力を持つことは社会に対する責任であると考えています。
この学びを活かし、今日から身近なところから意識的に行動を変え、多様性を歓迎し、誰もが安心して自分らしくいられる社会の実現に向けて、実践を続けていきたいと思います。
![]() 南雲 悠莉奈(なぐも ゆりな) 2025年に新卒としてサニーサイドアップに入社。大学では「新宿二丁目の女装文化」について研究していた。趣味はチーズケーキ巡りで、スプレッドシートに70件以上のカフェを記録している。
PRで世の中の価値観を変えることを目標に2025年4月に入社。中学生の頃にマーケティングに関心を持ち、大学時代は広告研究会に所属していた。大のビール好き。 |