【KEEN×サニーサイドアップ】「界隈」を分析し可視化することで効果的なマーケティングを実現ーー新時代のPR視点とは
近年、SNSなど情報収集・発信の変化によって人々の興味や関心が細分化し、特定の趣味や価値観を共有するコミュニティは「界隈」と呼ばれるようになりました。2024年には「新語・流行語大賞」にもノミネートされており、今や「界隈」はマーケティングにおいても無視できない存在となっています。
2019年に創業したKEEN株式会社は、この「界隈」を独自のデータベースと生成AIを用いて可視化する「KEEN界隈DB(データベース)」を展開。ブランドと生活者が新しい関係を築くための支援を続けてきました。代表の小倉一葉さんは、界隈を単なるブームとしてではなく、生活者一人ひとりの「自分らしさ」が集まった大切な場所として捉えています。
そんな小倉さんが、自社の広報・PRのパートナーとして選んだのがサニーサイドアップです。「たのしいさわぎをおこしたい」というサニーサイドアップならではのPR視点は、KEENの事業にどのような変化をもたらしたのでしょうか。
今回は、KEEN代表の小倉さんと、プロジェクトを伴走するサニーの平井那佳による対談を実施。テクノロジーとPRが織りなす「界隈マーケティング」の最前線に迫ります。

左より、KEEN株式会社 代表取締役 小倉一葉さん、サニーサイドアップ 平井
「界隈」は現代の生活者が作るマイクロコミュニティ
――まずはお2人の現在の立場やミッションについてお聞かせください。
小倉さん:KEEN株式会社代表の小倉です。わたしたちKEENでは「さまざまな『できない』理由から人々を解放し、世界を変えるムーブメントを作る」というミッションを掲げています。その実現のために、テクノロジーの力で質の高いつながりと体験を作ることを目指し、現在は「界隈マーケティング」を中心とした事業を行っています。
わたし自身のルーツをお話しすると、秋田の田舎で生まれ育ちました。どれくらい田舎かというと、広告を出してもクマしか見ないくらい(笑)。でも、そんな何もない田舎でも、マイクロソフトの創業者が作ったプロダクトに触れられることに、私は強烈なギャップを感じました。私はテクノロジーが持つ「プロダクトの力」、そしてそれを世界中に浸透させる「マーケティングの力」を感じ、その時の驚きと興奮が、今の私の原点になっています。
平井:サニーサイドアップの平井です。わたしたちのミッションは、PRの視点からクライアントが世の中に広めていきたい情報を“調理”して、興味関心を持ってもらえる形にし、クライアントの課題を解決することです。「たのしいさわぎをおこしたい」というマインドを持ちながら、世の中が少しでも明るくなるような活動を日々続けています。KEENさんとは、2025年の年末ごろにお声掛けいただいて、そこからご一緒させていただいています。
小倉さん:PRに注力したいという気持ちはありつつも、少人数体制でなかなか注力できないジレンマがある中で、どうせお世話になるのなら、わたしたちにとってロールモデルになるような、尊敬できる会社、リーダーとご一緒したいと考えました。サニーサイドアップさんは、次原さんという女性創業者がいらっしゃり、ぜひお付き合いをさせていただきたいとご連絡させていただきました。

平井:わたしたちも、現在PRでインフルエンサー施策などを行っている中で、KEENさんの「界隈」という考え方は非常に親和性が高いと感じました。小倉さんはじめ、皆さんの人柄も明るくエネルギッシュで、ご一緒していていつも元気をもらえるようなチームだなと感じています。
――「界隈」という言葉は近年になってよく使われるようになった言葉ですが、KEENではどのようにこの「界隈」を定義していらっしゃるのでしょうか。
小倉さん:もともとは「渋谷界隈」のように特定の地域であったり、近しい空間であったりをさす言葉でしたが、SNSが発達したことでその意味合いが変わってきました。今では「マーケター界隈」のように、その職業に就いている方々のことを界隈と呼ぶ方もいらっしゃいますし、「風呂キャンセル界隈」のように、Z世代を中心にミーム(言葉遊び)的に使われ始めている側面もあります。わたしたちは、その「界隈」をSNSのアルゴリズムによって集約されて作られた、同じ興味関心を持っている方々の集合体、つまり「マイクロコミュニティ」であると定義しています。
――その「界隈」がマーケティングにおいてどのように有効となるのでしょうか。
小倉さん:生活者の方々が「自分は〇〇界隈である」と自発的に発信している、いわばアイデンティティの発露としてその言葉が使われている点が非常に重要だと考えています。これまでのマーケティングは、デモグラフィック情報に基づいたり、ブランド側が都合のいいようにクラスターを区切ったりする手法が主流でした。しかし「界隈」はそうではなく、生活者側が自ら集合体を作っています。そのコミュニティの中に、ブランド側が「共創(コ・クリエーション)」させていただくという姿勢自体が、新しいマーケティングの形だと思っています。
SNSの発達やクリエイターの台頭により、一人の発言で商品が爆発的に売れることもあれば、逆にブランド批判や炎上につながることもあります。SNSが持つ力が極めて大きくなっている現代において、ブランド側が生活者といかに一緒に価値を作っていけるか。その大きな鍵の一つが「界隈」であると捉えています。
――商品やサービスを提供する側も、「界隈」を意識して刺さるところにリーチするという考え方が必要になってきているということでしょうか。
小倉さん:おっしゃる通りです。例えば、平井さんとわたしで見ているSNSのおすすめ欄が全く異なるように、SNSのアルゴリズムによって一人ひとりに最適化された情報が表示されるようになっています。たとえ同じ属性のターゲットであっても、届けるべき情報は一人ひとり違います。限られたリソースで成果を出すには、こうした新しいターゲティングの仕組みを考えなければなりません。
また、これまでの「コミュニティ」という言葉では、ブランドを熱烈に支持するロイヤル顧客に目が向きがちでした。しかし、コミュニティを拡大していくには、その“手前”にいる層へのアプローチが不可欠です。SNS上でブランドに言及はしているけれど、まだコミュニティには属していない。そうした人々が形成している「界隈」を捉えることが、今まさに求められています。
――平井さんはKEENの考える「界隈」についてどのように考えていらっしゃいますか?

平井:わたしたちもPRの現場で、商品・サービスの価値を正しく伝えることは大前提の上で、「どうバズを生み出すか」「そのために誰にアプローチするか」は常に考えてきました。ただ、KEENさんのように「界隈」を捉えてマーケティングに応用するという考え方は、小倉さんにお話を伺うまで初めての視点だったので、いつも勉強になっています。今までは、自分たちが手元で見ているデータだけでは「本当にその人がその領域にふさわしいのか」という確証を得るのが難しい部分もありました。「界隈」という捉え方は、わたしたちがこれまで想定してきた「コミュニティ」や「母集団」という言葉ともまた違う、新しいニュアンスとして非常にポジティブに捉えています。
「界隈」に詳しくなくても、熱量の中心を理解できるツールを提案
――KEENで展開している「KEEN界隈DB」はどのようなサービスですか?

小倉さん:「KEEN界隈DB」は、KEEN独自のマーケティングサービスです。このサービスでは、600を超える界隈のデータをSNS上から収集しています。その界隈と合わせて使われている言語は何なのかというところを、生成AIなどを活用しながらクラスタリングを行っています。その中で、界隈が起こる原理原則を分析し、特定のマイクロコミュニティの中で「いち早く情報を獲得したい」「乗り遅れたくない」といった心理から集団が形成されていく仕組みをデータベース化しています。
これにより、ある界隈は今この瞬間ホットであるというトレンドや、界隈の中心人物がどういった方なのかを数字で見ていくことができます。それをブランド側に提案することで、新しいインフルエンサーマーケティングができるようになるものです。
――どういう経緯があって、「界隈」に着目されたのでしょうか。
小倉さん:わたしの前職はマイクロソフトなのですが、その時にコミュニティをゼロから立ち上げ、運営していた経験があります。その活動を通じて、コミュニティが持つ熱量や、そこから生まれるコ・クリエーションの可能性を肌で感じてきました。ただ、一方でコミュニティ運営の難しさも実感していて、コミュニティが成熟するほど、どうしても閉鎖的になりやすく、新しい人が入りにくい。ブランドを成長させ続けるには、既存の熱狂的なファンを大切にしながらも、その外側にいる「これからファンになる可能性のある人々」にどうアプローチするかが極めて重要だと考えるようになりました。

その解決策を探る中で辿り着いたのが、SNS上で生活者が自ら作り出している「界隈」という概念です。ブランド側が管理する「箱」としてのコミュニティではなく、生活者が自発的に形成しているゆるやかな繋がりに着目し、そこをデータで可視化することで、より健全で広がりのあるマーケティングができるのではないかと考えたのが、事業の原点です。
平井:感覚だけで進めるのではなく、データという裏付けを持って「この界隈の方々と一緒にやっていきましょう」とクライアントに提案できることは、わたしたちにとっても非常に心強いものです。わたしたちの仕事は、クライアントと一緒にそのブランドを「誰に伝えたいか」というターゲット設定から始まります。これまでは、自分たちが持っている感覚や経験値に基づいて、「このあたりにターゲットがいるのではないか」と仮説を立てていましたが、そこにKEENさんの「界隈」という客観的なデータが加わることで、自分たちの見立てが合っているのかという答え合わせができる。そこが非常に画期的な事業だと感じています。
小倉さん:もちろんフォロワー数もとても重要な指標で、信頼の蓄積、実績でもありますから。でもそれだけで見てしまうと100万人のフォロワーがいても、その100万人にちゃんと届けられているかは別。メッセージを届けられるかどうか、その「界隈」にいればわかるけれど、そうじゃなければわかりにくい部分です。そこを「界隈」にいなくても、情報としてわかるようになることを目指しています。
――実際にどのような企業が、この「KEEN界隈DB」を活用されているのでしょうか。
小倉さん: 例えば、ある美容系ブランドの事例では、自分たちがターゲットだと考えていた層とは全く別のところに、実は熱量の高い「界隈」が存在していたことがデータで判明しました。これまでは、どうしても担当者の方の経験や感覚、あるいはアンケートといった「点」の調査に頼らざるを得なかった部分があったんです。以前なら、その「誰に届けるべきか」の答え合わせをするのに膨大な時間とコストがかかっていました。それが、このデータベースを使うことで、今この瞬間にどの界隈の、どのインフルエンサーが、どのような文脈で信頼されているのかが数字で可視化されます。
平井:わたしたちもその事例を拝見して、届けた先にどのくらいの人たちに情報が届いているのか、その「質」を信頼性を持って確認できる点は、既存のマーケティングを大きく変えるものだと感じました。
小倉さん:おかげさまで、単に「バズらせる」のではなく、ブランド側がコ・クリエーションできる本物のパートナーを見つけられるプラットフォームとして、着実に実績が積み上がっています。
平井:こうした具体的な成功事例を、サニーとしてもストーリー化して発信していくことで、「界隈」という考え方が業界の新しいスタンダードになっていくと確信しています。
ストーリーを整理できたからこそ、本音で語りあえる――サニーとの取り組み
――KEENとして、PR施策に注力しようと思った理由はどのようなことでしょうか。
小倉さん:わたしたちはもともとプロダクトの開発に重きを置いてきましたが、この「KEEN界隈DB」がマーケティングをどう変え、どのような新しい価値を提供できるのかを、より広く正しく伝えていく必要があると感じたのがきっかけです。これまでは自分たちのコミュニティ内での発信が中心でしたが、一歩外へ出て、より多くのブランドやマーケターの方々に「界隈」という考え方を知っていただきたいと考えました。

そのパートナーとしてサニーサイドアップさんを選んだのは、単なる情報の露出だけでなく、世の中の空気感やトレンドを捉えて新しい価値観を社会に定着させる「空気づくり」に長けていらっしゃるという印象があったからです。「界隈」という概念を広めることは、一種の文化づくりに近い側面があります。だからこそ、手法としてのPRだけでなく、その背景にある思想やストーリーまでを汲み取って世の中に届けてくださるサニーサイドアップさんとご一緒したいと考えました。
また、平井さんをはじめとするメンバーの皆さんが、わたしたちのプロダクトを単なる分析ツールとしてではなく、これからのマーケティングに不可欠なものだと深く理解し、熱量を持って向き合ってくださったことも非常に大きな決め手になりました。
――ちなみに、小倉さんはサニーサイドアップをどのようにして知りましたか?
小倉さん:知人のスタートアップのご支援もされているというお話を聞いたのがきっかけです。「実はああいう会社もサニーさんがお手伝いしてくれてるから、こんな賑やかなというか、盛り上がりがあったんだろうな」と。
スタートアップでもサニーさんに頼っていいんだ、ということがそこで腹落ちというか、納得しました。冒頭でもお話しした通り、女性の創業者ということもあり、尊敬する一社でもあったので、ぜひお願いしたいなというところで、わたしたちからオファーをさせていただきました。
――平井さんから見て、KEENという会社や小倉さんにはどのような印象をお持ちですか?
平井:小倉さんと執行役員COOの羽田トーマス洸太さんが学生時代からの友人とのことで、お2人が和気あいあいとされている様子を見て、とてもエネルギッシュで素敵だなと感じていました。一方で、小倉さん自ら足を運んだり、DMを送ったりといった非常に地道で丁寧な営業活動をされていたとも伺っていました。ですので、わたしたちの力で第三者のメディアを介した「空中戦」のようなサポートができたらという思いで、今いろいろなご支援をさせていただいています。

また、単にサービス内容だけでなく、相対する人たちの雰囲気も大切だと思っています。小倉さんがご自身でマーケティング界隈の人たちを集めてバーベキューを振る舞っていらっしゃったりするんですよ。その仲間の作り方やコミュニティのあり方が本当に素敵だなと感じました。それに、実際に渋谷などの街に出て「なんでこれを買ったんですか?」と街頭インタビューをしたりもしているんですよ。
小倉さん:テクノロジーからリアルの感動まで、と言いますか(笑)。結局、テクノロジーなどはツールであって最後は「人の心がどう動くか」。人がいる場所に実際に飛び込んで、その熱量をブランドや生活者の方々へ繋いでいくことが大切だと考えています。
平井:そうしたKEENさんの社風や「人」の魅力も、メディアを通してしっかり発信していきたい部分です。「人の熱量」を、PRの力でより遠く、より多くの人に届けていく。それが、わたしたちがKEENさんのパートナーとして、一緒に成し遂げたい未来です。
――サニーサイドアップとのPRのプロジェクトが始まってから、具体的にどのような変化を感じていますか。
小倉さん:自分たちをどう語るべきかという「ストーリー」を整理できたことが、すでに大きな価値になっています。わたしたちはどうしても理系脳なので、これまでは「機能的にこれができる」というツールベンダーとしての説明に寄ってしまいがちだったんです。
平井:小倉さんの立ち上げの経緯や「界隈」という考え方の本質が素晴らしいので、それをどうメディアの視点や世の中のニーズと結びつけるかを大切にしました。そのためにまずは、ファクトブックやプロフィールシートといった「材料」を整えるところから始めています。
小倉さん:そのおかげで、クライアントの経営陣の方々と対峙したときに、わたしたちが何を目指し、世の中にどう受け入れられているのかをストーリーで話せるようになりました。本音と本音で語り合えるようになったのは、大きな変化ですね。
平井:そうして整理したストーリーを持って、2月からは美容業界のご担当者が読まれるビジネス媒体や専門誌を中心に、積極的なアプローチを続けています。
――今後、さらに力を入れていきたい取り組みやビジョンについても教えてください。

平井:今まさに進行しているのが、KEENさん独自のデータを活用した「調査レポート」の作成です。これをもとに、メディア向けの勉強会・ラウンドテーブルを実施しようと準備を進めています。
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調査レポート |
小倉さん:調査レポートや、サニーさんが繋いでくださる連載のお話などは、自社一社では絶対にやりきれなかった機会です。日々学びをいただいています。
平井:今後はさらにメディアの幅を広げ、小倉さんを「界隈の第一人者」としてより世の中に発信していきたいです。サニーサイドアップが得意とするコミュニケーションソリューションと、KEENさんのデータを掛け合わせて、より多くのクライアントを一緒にサポートしていけるパートナーシップを築いていきたいですね。今取り組んでいる専門誌へのアプローチだけでなく、今後はさらにジャンルを広げて、より多くの方にKEENさんのサービスの魅力を届けていきたいです。サニーの強みであるPRの力と、KEENさんのデータ。このパートナーシップで、クライアントの課題を一緒に解決していけたらと思っています。
小倉さん:時代やテクノロジーが変わっても、人が集まる場所=コミュニティはなくなりません。わたしたちはデジタルでもリアルでも、人がいる場所に実際に飛び込んで、その熱量をブランドや生活者の方々へ繋いでいく存在であり続けたい。サニーさんと一緒なら、その挑戦をより大きなムーブメントにしていけると感じています。
単なる情報の拡散ではなく、その先にある「人の心の動き」を可視化し、「界隈」から世の中の空気を変えていくこと。KEENでは、そんな「界隈」からのアプローチをこれからもさまざまな形で展開し、そこにサニーサイドアップが伴走していきます。新しいマーケティングに頭を悩ませている企業やブランドの担当者の方は、「KEEN界隈DB」も一度チェックしてみてはいかがでしょうか。



