【東日本旅客鉄道 × サニーサイドアップ】TAKANAWA GATEWAY CITYの仕掛け人が語る「100年先の心豊かなくらしのための実験場」とは
「100年先の心豊かなくらしのための実験場」――そんな壮大な位置付けで、「TAKANAWA GATEWAY CITY」は2025年3月に「まちびらき」を行いました。
この街は東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)が単独で手がける、国内最大級のまちづくりプロジェクト。駅と街が一体となった“エキマチ”として、環境・モビリティ・ヘルスケアなど多様な社会課題の解決を目指したこの街は、今後2026年3月28日にはグランドオープンを迎えます。

大きなビジョンを掲げるこのまちづくりプロジェクトに、サニーサイドアップはPR事務局として伴走。数えきれないほどのPRポイントを持つ街だからこそ、何をいつ対外的に発表するかという、戦略的なPRが求められました。
今回は、JR東日本の出川智之さんと、PRパートナーとして伴走したサニーサイドアップ 5局スポーツ 局長の増子慶太に、まちづくりの構想とその裏側についてお話いただきました。

街そのものが実験場――TAKANAWA GATEWAY CITYのテーマとは
―― まず、「TAKANAWA GATEWAY CITY」とはどのような街なのでしょうか。
出川さん:もともと鉄道の車両基地だった広大な土地を、“社会のために新しい価値を生み出す場所”として開発する方向性に定めました。単なる再開発ではなく、“実験の舞台”として、多様な要素を融合させています。
「TAKANAWA GATEWAY CITY RESIDENCE」、「MoN Takanawa:The Museum of Narratives」「THE LINKPILLAR1NORTH/SOUTH」「THE LINKPILLAR2」の5棟からなる街には、オフィス、商業施設、ホテル、ビジネス創造施設、フィットネス&スパ、クリニック、文化創造施設、レジデンス、エネルギーセンターなど、さまざまな施設を擁しており、次の時代に必要とされる技術やサービスを、街全体を使って試しています。

JR東日本 マーケティング本部 まちづくり部門 品川ユニット TAKANAWA GATEWAY CITY (ブランディング・プロモーション) マネージャー 出川智之さん
そこには、便利さや効率だけでなく、人が「ここにいたい」と思える街をどうデザインするかが重要です。文化や自然、コミュニティといった“人の営み”に焦点を当て、世代を超えて持続する価値をどう残すかを考え、「100年先の心豊かなくらしのための実験場」をテーマとしています。
―― “実験場”という発想がユニークですが、具体的にはどのような取り組みをされていくのでしょうか。
出川さん:「100年先の心豊かなくらしのための実験場」という考え方は、街のいたるところに散りばめられています。
たとえばモビリティでは、地域住民の多様な移動ニーズに応え、交通不便地域の解消と地域効率的な移動手段としての「グリーンスローモビリティ」や一部水素由来の電気により充電された環境に優しい自動走行モビリティを導入していますし、環境面では生態系再生をテーマに多様な植栽を導入しています。

敷地内を走る自動走行モビリティ
また、「TAKANAWA GATEWAY Link Scholars’ Hub(以下、LiSH)」では、アカデミア、弁理士、弁護士、税理士などの専門家の支援を受けながら、大学や企業が共同研究を行う環境が整備されています。
一般のコワーキングスペースとは異なり、Labには大学研究室並みの実験設備を備えており、環境・ヘルスケアなどに関する基礎研究が可能。ライフサイエンス系のスタートアップなどが初期投資を抑えて活動しやすい環境になっています。
来春開業予定の「THE LINKPILLAR2」の地下にあるエネルギーセンターでは、街全体のエネルギーマネジメントを行っており、効率的な管理によって環境負荷を抑えています。また、JRの自営電源や複数の電源ライン、ディーゼル発電などにより、災害などが起きた際には街の3日分の電力をバックアップできます。
「THE LINKPILLAR1」には最大2,000人が収容できるコンベンション施設があり、国際会議やサミット会場になり得る設備を整えています。
街の中にはラグジュアリーホテル「JWマリオット・ホテル東京」や「ニュウマン高輪」などもあり、例えば会議で訪れた方が、予定の前後で文化体験や食事などを行うことができるといった、ワンストップの体験ができる街になっています。
―― 増子さんは、この実験場としてのまちづくりに初めて触れたとき、どのように感じられましたか。
増子:「ここは開発地ではなく“思想”そのものだ」と感じました。JR東日本さんが本気で未来社会を考え、企業・大学・地域がそこに共感し、協働している。その構造自体が社会実験になっていますよね。
PRの観点からも、“暮らしそのものがメッセージになる街”という点が非常にユニークで魅力的です。この街が持っている「未来の実験場」という本質を、いかにわかりやすく伝えられるか。そして、街の変化をどのようにストーリーとして伝えていくかが、カギになるのではないかと感じました。

サニーサイドアップ 5局スポーツ 局長 増子慶太
出川さん:そこがまさにわたしたちも大切にしている部分で、まちづくりは建設ではなく“文化活動”だと考えています。この街は完成して終わりではなく、常に変化し続けます。多くの人が関わり、一緒に形づくっていける場にし、100年後の社会の姿を創造していきたいと思っています。
意見をぶつけ合える関係――サニーサイドアップとのパートナーシップ
―― TAKANAWA GATEWAY CITYのPRに関して、サニーサイドアップとタッグを組んだ経緯を教えてください。
出川さん:まず、このプロジェクトについては、「この街の特徴を、どう社会に伝えるか」という課題がありました。建物や施設ではなく、この街の持つ“思想”を発信する必要があったんです。
サニーサイドアップさんの企画書には、広告や宣伝のような言葉が出てこなくて、「街がどう息づくか」「ここでどんな体験をするのか」という視点がありました。そこに、強く共感したんです。
JR東日本は鉄道会社であり、本プロジェクトにおいても公共性と挑戦の両方を求められます。ご提案時点では、街の概要や詳細などが公開される前でしたが、少ない情報の中でもわたしたちに求められていることのバランスを理解し、最適な提案をしてくれました。非常に分かりやすい言葉で提案されていましたし、熱量も非常に高かった。長期にわたって伴走してくださる姿勢が感じられました。
なにより「自分たちもこの街の一員でありたい」と言ってくれたことが、とても心強かったですね。

増子:「100年先の心豊かなくらしのための実験場」というテーマは、再開発の枠を超えた大きなもの。だからこそ、わたしたちもJR東日本さんの一員になったつもりで考えることを徹底し、単に伝えるのではなく、街の価値そのものを一緒に育てる意識で臨みました。
作る側の視点を持つことで、より本質的なコミュニケーションを取ることができる。そこが、わたしたちと出川さんたちを繋ぐ、共通言語になったと思います。
―― まさに“同じ目線で考える”関係ですね。
出川さん:そうですね。多くのステークホルダーが関わるなかで、サニーサイドアップさんは情報整理と構造設計で大きな力を発揮してくれました。
増子:わたしたちは“発信の前に構造を整理する”ことを重視しました。たとえば、ひとつのアクションが「認知のためのもの」なのか「来場を促すもの」なのかによって、打ち手はまったく変わります。
まずはJR東日本さんの各チームと一緒に目的を洗い出し、それぞれの施策を「どんな価値を社会に届けるものか」に紐づけて再構築しました。そのうえで、街が持つストーリーをどう伝えるかを考えました。

わたしたちが発信したいのは、「イベントをやった」という事実ではなく、「この街がどんな未来を信じているか」というメッセージです。
TAKANAWA GATEWAY CITYは、企業や組織の垣根を超えて、ともに実験を続ける開かれた街。その本質をメディアやSNS、リアルイベントを通じてどう表現するか。そこがわたしたちの腕の見せどころでした。
―― 出川さんにとって、サニーサイドアップはどんな存在ですか。
出川さん:まさにパートナーですね。わたしたちが慎重になりすぎると、「でもこの街の魅力は、100年先を見据えている点ですよね?」と背中を押してくれる。良い意味で揺さぶってくれる存在です。常に攻めの視点を持っているからこそ、プロジェクトが前向きに進化していったと感じています。
意見をぶつけ合える関係でいられたことが、とてもありがたかったですね。
増子:わたしたちもJR東日本さんの「誠実さ」や「安全第一」の姿勢に学ぶことが多いです。社会的責任を背負う企業が、本気で未来に挑んでいるという覚悟が感じられました。その真摯な姿勢があるからこそ、本気で伴走できる。互いに学び合う“共同研究”のような関係になれていると思います。
出川さん:TAKANAWA GATEWAY CITYというのは、ひとつの街であると同時に、企業や人がともに挑戦するプラットフォームでもあります。サニーサイドアップさんとの関係も、まさにその象徴。これからも実験仲間として、一緒に街の未来を育てていきたいですね。
街をメディア化する、「まちびらき」への挑戦
―― 実際の取り組みとして印象的だったのは?
出川さん:2024年3月の「まちびらき」です。初めて街が開かれる節目のイベントでしたが、まだ工事や最終調整が続いている中での開催でした。
ですが、あえて “未完成の街を見せる”ことで、街は完成して終わりではなく、進化し続ける。その思想を体験として伝えるために、サニーサイドアップさんと一緒に工夫していきました。

増子:わたしたちは「街そのものをメディア化する」という発想で臨みました。建築やテクノロジーを見せるのではなく、人の表情や日常が動きだす瞬間を伝えていくように意識しました。
象徴的だったのが噴水エリアでの演出です。子どもたちが自由に遊び、家族が笑顔を見せる場をつくることで、街の“生命力”を可視化しました。
出川さん:サニーサイドアップさんはメディアの撮影日に向けて、「メディアがどんな絵を求めているか」を逆算し、PR効果の高い演出を提案してくれました。
近隣の保育園のお散歩ルートを調査したうえで、子どもたちが噴水で遊ぶシーンを撮影できるポイントとして、的確にメディアプロモートを行ってくださったんです。
増子:この街の豊かさって、結局は人の表情だと思うんです。だからこそ、報道用のビジュアルも「街の風景」ではなく「街で過ごす人々の瞬間」を中心に撮影しました。子どもが水に触れ、親が笑い、カフェで人が語り合う――そうした“生活の証”をどう切り取るか。それがわたしたちPRのプロフェッショナルにとって最も重要なテーマでした。
わたしたちは「情報を発信する」のではなく、「情報を開発する」と考えています。つまり、報道資料や広告ではなく、現場で起こる出来事そのものを“ニュース”にするということ。
先ほどお話しした噴水エリアでは、イベントの裏側で、近隣の方々や通りかかった方が自然と足を止め、気づけば一緒に場をつくってくれるような光景がありました。それを見た瞬間、「これこそが街のPRだ」と感じました。
わたしたちが“作る”のではなく、人の関わりによって“生まれる”ニュースを拾い上げる。そこに街のPRの本質があるのだと思います。
―― イベント当日の運営面でもさまざまな工夫をされたそうですね。
出川さん:さまざまなステークホルダーが一堂に会するプロジェクトですので、ひとつの内覧会を実施するだけでも、細心の配慮が求められました。行政・地元・企業・メディアなど、それぞれに伝えるべきメッセージが異なります。
この街をどう見せるか、どんな順番で案内するか、その整理と構成を、サニーサイドアップさんが一緒に考えてくれました。
特に印象に残っているのが、「安全」と「魅力発信」の両立です。わたしたちはインフラ企業のため、安全が最優先です。一方で、メディアは街の“生きた姿”を撮りたい。そのギャップを埋めるために、サニーサイドアップさんのチームが現場導線を設計し、取材スポットを整理してくれたおかげで、安心して“開かれた内覧会”を実現できました。
―― 成果も大きかったそうですね。
出川さん:おかげでまで、「まちびらき」は8,621媒体で取り上げられ、広告換算額は約53億円。来場者は5万人を超えました。SNSでもたくさんの声をいただきました。話題となっただけではなく、理念への共感が広がったことがうれしかったです。
増子:露出媒体数や広告換算額といった数値以上に大事なのは、「人の記憶に残るかどうか」だと思っています。噴水のシーンや、光と音が融合したナイトイベントなど、体験としての印象が強く残ったことが、長期的に街のブランド価値を育てると信じています。

―― 現場での苦労は?
増子:やはり一番は意思統一ですね。関係者が多い分、PRの意図を共有するのが難しい場面もありました。ただ、出川さんたちJR東日本のチームはいつも「まず理念から話そう」と言ってくれて、それが本当に助かりました。
イベントの大小にかかわらず、「何のためにやるのか」、「街にどんな意味があるのか」を最初に確認する。その姿勢があったからこそ、わたしたちも安心して提案できました。
出川さん:わたしたちも、サニーサイドアップの現場対応力には驚かされました。天候や報道スケジュールが変わっても、常に代替案を持っていて、しかもそれが“街の世界観”から外れない。「この街らしさ」を一緒に守り抜いてくれるという信頼がありましたね。
開業してから始まる――TAKANAWA GATEWAY CITYのこれから
―― 直近の取り組みについても教えてください。
出川さん:直近では、「TAKANAWA GATEWAY CITY CHRISTMAS 2025」という初のクリスマスイベントを開催します。テーマは“クリスマスが、やってきた”。

高輪ゲートウェイ駅を出ると正面に広がるGateway Parkには2本のシンボルツリー「Warm Trees」が登場し、街全体が光と音楽、噴水によるショーで包まれます。期間中はクリスマスマーケットやパレードなど、多彩な催しを通じて、地域のみなさんや訪れる方々と一体になって街を楽しむ時間をつくりたいと思っています。

特に注目してほしいのが、「LiSH」のスタートアップ企業と、街に寄せられた「この街でこんなことやりたい」という声を掛け合わせて生まれた共創プログラム「ILLUMINACTION(イルミナクション)」です。“イルミネーション”と“アクション”を掛け合わせたこの企画では、キノコ由来の新素材を使ったワークショップや、人力発電でイルミネーションを点灯させる体験など、環境・テクノロジー・教育が交差する実験的なイベントを展開します。
街が主役ではなく、人が主役。訪れる人自身がこの街の“実験”に参加し、笑顔や学びが生まれる――そんな温かい時間を重ねていけたらと思っています。
―― TAKANAWA GATEWAY CITYは今後、どんな進化を?
出川さん:開発はまだ序章です。これから注力するのは「環境」「モビリティ」「ヘルスケア」の3つ。再生可能エネルギーの自給循環や自動運転・ドローンの実装、メディカルセンターでの新たな医療の仕組みなど、さまざまなことに取り組んでいきます。
一方で、新たな日本文化を創造・発信するミュージアム「MoN Takanawa:The Museum of Narratives」を核に、感性を刺激するプログラムも展開していきたいと考えています。
―― 「街が変化し続ける」ことが目的なのですね。
出川さん:そうですね。街は進化する生きものだと捉えています。暮らす人や企業の行動が新しい文化を生み出していく。その過程こそが「100年先の心豊かなくらし」の正体だと思います。
増子:私も、街は人が作るメディアだと感じています。これからは、開業後の変化を丁寧に見つめ、発信し続けるストーリー開発チームとして関われたらと思いますね。
出川さん:この街は、開発者や行政がつくるだけのものではなく、参加した人みんなが“共創者”です。住む人、働く人、訪れる人、それぞれの体験が街の一部になっていく。だからこそ、PRやコミュニケーションも、単なる発信ではなく共感を育てる活動であってほしいと考えています。
―― まさに共創を体現していく街ですね。
出川さん:そう思います。今後は企業や団体、若い世代、スタートアップとも連携し、街を社会課題解決のプラットフォームにしていきたいです。そして、訪れる人たちが「自分も実験の一部だ」と感じられる街にしたい。そのためにも、AIアートや環境ワークショップなど、双方向の体験を増やしていきたいです。
増子:街を舞台に企業やクリエイターが表現すること自体が情報発信になる。そんな、共創の輪を広げていきたいですし、新しいPRの形が求められるこれからの挑戦に、ワクワクしています。
―― 100年という時間軸を掲げるのは、JR東日本ならではですね。
出川さん:鉄道も街も、人の暮らしとともに時間を重ねていくもので、わたしたちがつくっているのは建物ではなく「次の社会」です。今の選択が未来をつくる。TAKANAWA GATEWAY CITYは、その責任を果たすための社会的挑戦です。人と人がつながり、共創をしていくためのプラットフォームとして、この街が進化し続けてほしいと考えています。
増子:PRもまた“未来への投資”だと思っています。短期的な話題でなく、長く語り継がれる価値を育てる。JR東日本さんの「100年先を見据える姿勢」は、PRのあり方をアップデートしてくれると感じます。
そして、その物語を伝え続けるのが、わたしたちの使命です。この街の実験が、一人ひとりの価値観を変えていく。そんな連鎖を、これからも伴走しながら広げていきたいですね。

未来のくらしを描いていく街として、今まさに動き始めている「TAKANAWA GATEWAY CITY」。
この街での日常は、きっと未来のくらしを豊かにしてくれる技術や習慣、文化へとつながっていくはず。JR東日本が思いを込めて作りあげた素晴らしい”実験場”に、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
サニーサイドアップはさまざまな商品・サービスのPR・コミュニケーションを手がけています。
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