AIネイティブ時代に、PRのあり方はどう変わる? 深津貴之が「AI・リレーションズ・アドバイザー」に就任&「AI Dialogue & Relations Team」を発足
AIの進化が目覚ましいスピードで進む今、社会のあり方も、働き方も、そしてコミュニケーションの形も、大きく変わろうとしています。そんな中で、サニーサイドアップグループはAIを「脅威」ではなく、「新しいパートナー」として捉え、2025年11月6日に、AIと人のよりよい関係を探るための専門チーム「AI Dialogue & Relations Team」を発足しました。
同時に「AI・リレーションズ・アドバイザー」として就任したのが、クリエイティブファームTHE GUILD 代表やnote株式会社 CXOなどを務めている深津貴之氏。
当社グループは、AIの思想や技術を深く理解する第一人者である深津氏とともに、AIとの協業ワークフローや最新情報の意見交換、AIネイティブ時代におけるPR・コミュニケーションの価値をどう再定義し、どのように発信していくのかなどを、探求していきたいと考えています。
そこで今回は、「AI Dialogue & Relations Team」の中核メンバーであるサニーサイドアップの執行役員・岩崎真之介と深津氏に、チーム設立の背景やこれからの展望を話していただきました。

AIと “信頼し合える”関係をつくりたい
―― まず、岩崎さんにお聞きします。新チーム「AI Dialogue & Relations Team」を立ち上げた背景を教えてください。
岩崎:ここ1,2年でAIの進化は加速しました。わたしたちの周りでも、「AIをどう活用するか」という話題は尽きません。でも、これからわたしたちが大切にしたいと考えているのは、AIを“便利なツール”として使うことよりも、AIを理解し、“信頼関係を築く”という視点。

サニーサイドアップ 執行役員 兼 4局 局長 兼 AI Dialogue & Relations Team 岩崎真之介
PRは「Public Relations」とある通り、人と人、企業と社会のあいだにある「関係性」を構築することが本質です。今後確実に訪れるAIネイティブ時代では、人間のコミュニケーション能力や信頼を形にする力がより一層問われるのではないかと感じています。そうした考えから、AI活用の第一人者と一緒に、学びながら取り組みたいと考え、専門チームを発足し、深津さんにお声がけしました。
―― なぜ深津さんにお声がけしたのでしょうか。
岩崎:以前から親しくさせていただいていたので、深津さんが「深津式プロンプト」をはじめとした生成AIに精通していらっしゃることは理解していました。
AIがあらゆる判断のベースとなる社会になっていくなかで、人間関係の活用をどう最大化するのか、どのように人間らしく生きるのか、という部分を議論して発信していただける存在として、深津さんとご一緒したいと思いました。
―― チームとして、どんな活動を考えていらっしゃいますか?
岩崎:AIの世界は、昨日までの常識が今日には通じないくらい、本当に日々変化の連続です。だからこそ、AIと対話を重ねて学び続ける姿勢が欠かせません。
「AI Dialogue & Relations Team」は「AIを理解する」ことと「社会へ伝える」こと、この両輪で動いていきます。クライアントやパートナーのみなさんに新しい知見を共有しながら、AIを通じてより良い関係を築くサポートをしていきたいと思っています。
―― 深津さんは、お話を聞いたときにどのような印象を持たれましたか。
深津:まず、「これは学びの機会になる」と率直に感じました。「AI時代のPRのあり方」は、これから社会全体で模索が始まるテーマです。僕がアドバイスするというよりも、僕自身もサニーサイドアップのみなさんからいろいろ学ばせていただきたいと思っています。

サニーサイドアップ AI・リレーションズ・アドバイザー、クリエイティブファームTHE GUILD 代表、note株式会社 CXOなどを務める深津貴之氏
「AI」というと、一般的にはChatGPTのようなツールの印象が強いのではないでしょうか。Googleで検索していたものを、代わりにChatGPTに聞いてみる、といった感覚だと思います。
ですが僕は少し先、2030年の社会を見据えて考えていて、その頃には、AIが人間の指示を待つだけでなく、自ら提案し、行動するようになっているはずと考えています。つまり、AIが優秀なエージェントとして自律的に動く時代です。
そういう時代の中で、本当に重要になるのは“誰とどんな関係を築いているか”という社会資本の価値。そういった意味で、社会資本のプロフェッショナルであるサニーサイドアップと一緒に考えていくことは、自らの学びやいろんな可能性を含めて楽しみになりました。
―― 社会資本、つまり「人とのつながり」や「信頼」のことですね。
深津:そうです。例えば、ただキレイな文章を書くだけであれば、AIを活用することで、全員ができるようになるでしょう。
その一方で、たとえば財界の著名人や業界のトップに電話をかけて直接取材ができる、そういうことに社会資本の価値が見出されていくようになります。「誰に取材をお願いできるか」「どんな人に信頼されているか」といった部分はAIには代替できません。PR業界だけでなく、社会全体で人間関係の価値が見直されるタイミングが来ると思っています。
AIが広く普及した時代には、逆説的に『人ならではの創造性や共感』といった、AI以外の部分が大きな価値を持つのです。
AIがステークホルダーになる時代
―― 海外と比較して、日本のAI活用の状況はいかがでしょうか。
深津:AIに関して、日本は基本的に遅れています。特に、民間企業での採択が遅れているんです。
その要因として、日本が英語圏ではないということもあるのですが、「絶対に間違えないものでなければ使わない」「セキュリティが完璧でなければ導入しない」という日本固有の企業風土があり、保留になってしまう傾向が強いんですね。
しかしながら、AIなどの最新テクノロジーは先行者が利益を得るものが基本ですから、先送りしてしまうことこそが、一番のリスクです。
岩崎:わたしたちが世界の最先端をちゃんと見て、追いかけなければならないと考えている理由は、今お付き合いのあるクライアントさんやパートナーさんに対して、AIに関しての導入や活用、さらには発信手法についてもリードできるように理解を深めていかなければならないからです。

パートナーさんがとても素晴らしい内容を発信したとしても、AIがその情報を理解・回答に使ってくれず、なぜダメなんだろうかと壁にぶつかってしまう時が必ず来てしまう。
価値をしっかり届け、訴求していくためにも、わたしたち自身がAIを理解し、AIから信頼される一次情報を発信していく意識を持つことが大切です。それこそが、わたしたちの仕事であると考えています。
―― これからのAIと社会の関係を、どのように見ていますか?
深津:今は、検索エンジンから「質問に答えてくれるAI」へと時代が移っている最中です。もう少しすると、AIから提案してくれるようになるでしょう。
「来週はこの準備をしておいた方がいいですよ」、「この情報を整理しておきました」みたいに、AIが自律的に複雑なタスクをこなすようになり、まるでパートナーのように動くようになります。そうなれば、わたしたちが“AIとどう関わるか”というより、“AIがわたしたちをどう見るか”が重要になります。
つまり、AIが企業をどう評価するか。そこが、社会の信頼構造を左右するようになります。AIは、社会にとって新しいステークホルダーのひとつになるんです。
岩崎:まさにその点に、わたしたちも注目しています。AIが企業やブランドをどう認識し、どう紹介するか。それを設計することこそ、これからのPRの仕事になるはず。AIに“信頼される情報”を届けていくこと、そのために必要なことが「Dialogue(対話)」であり、そこから生まれる「Relations(関係構築)」だと考えています。
―― チーム名の「Dialogue」と「Relations」には、そうした思いが込められているのですね。
岩崎:はい。AIとの相互理解を深めること、そしてAI時代においても人と人とのリレーションをより強くしていくこと。この2つを柱にしています。AIを通して社会に信頼を築く。それがわたしたちの目指す方向です。
深津:AIによって効率化されるほど、”偶然の出会い”や“リアルなつながり”といったAI以外の部分の価値がより高まります。

岩崎:実は当社には、表に出ていなくて名前は知られていなくても、その業界や世代を超えたつながりを持っているスター級のPRパーソンがたくさんいます。その経験やネットワークを、よりオープンに共有できるようにすることで、AIではつくれない信頼の循環が生まれるはず。それこそが、PRの進化の形なんだと思います。
AIを恐れず、仲間に。これからのPRとは――
―― これからAIネイティブ時代を迎える中で、多くの人が「自分の仕事はどうなるのだろう」と不安を感じています。その点についてはどう考えますか?
深津:AIを脅威だと感じるのは、ごく自然なことだと思います。でも、AIはわたしたちに成り代わる存在ではなく、部下やチームメイトのような存在です。
数年後には、誰でも“リモートの優秀な部下”を何人も持てるような時代になります。その時に必要なのは、AIをどう育て、どうリードできるかというリーダーシップ。つまり、AIネイティブ時代の「チームマネジメント力」が試される時代になっていきます。
岩崎:まさにPRの本質と同じですよね。人とAI、AIと社会、そして企業と生活者。その関係性をデザインしていくことが、これからのPRの役割になると思います。AIを使いこなすだけでなく、どうやってともに価値を生み出していくのか。その挑戦を、深津さんとこのチームで探っていきたいです。

―― AI時代の「信頼」をつなぐために、サニーサイドアップの挑戦をどのように社会に広げていきたいですか。
岩崎:「AIは難しそう」と思っている方や組織こそ、まずは一歩踏み出してほしいですね。ガラケーからスマホに変わったとき、最初は戸惑っても、気づけば生活の中心になっていますよね。AIも同じです。活用法を覚える過程そのものが、新しい発見になると思います。
深津:AIが普及し、効率化される部分が増えていくなかで、“人間らしさ”の価値はどんどん上がります。共感やストーリーテリング、身体的な体験など、AIにはできない部分をどう磨くかが、これからの鍵。
PRという仕事はまさにその最前線にあります。AI時代のパートナーとして、人とAIの信頼をつなぐ挑戦を、サニーサイドアップでのチャレンジから広げていきたいです。

AIという存在は、もはやツールのひとつではなく“共に働く仲間”になりつつあります。そんな時代の流れのなかでサニーサイドアップが目指しているのは、「人とAIが信頼で結ばれる未来」。
その第一歩が、この「AI Dialogue & Relations Team」です。AIネイティブの新しいコミュニケーションにPRの力を掛け合わせ、AI時代においても“たのしいさわぎ”を起こせるよう、チームで取り組んでいきます。




